甘利大臣や宮崎議員の辞任、タレントのベッキーのスキャンダルは年明けより、その前にも清原和博やアスカの覚醒剤疑惑・逮捕や武藤議員の金銭トラブルからの辞職など、これらは週刊文春のスクープが発端でした。
スクープにより、多くの人々が各界の頂点の人たちの意外性に驚き、井戸端談義に花が咲き、関心を持ってそのライブショーを見守ります。「文春よ、よくやった!」と私は拍手を贈りたました。同時に政界のスクープは新聞やテレビが果たす役割では…と首を傾げることも…。
どうして、多くのスクープを世に紹介することができるのでしょうか。
当誌は㈱文芸春秋が発行する週刊誌です。芥川賞や直木賞をはじめ、話題性のある高い文化事業の文芸賞を手がけています。一方1974年、首相の金脈問題(立花隆執筆)を特集し、田中首相退陣のきっかけとなりました。「スクープを取る」というDNAが継承され、現在の編集長を筆頭に他誌に勝る程の取材体制があるように思われます。
また、発行部数の減少が続く出版業界の中、最も多い部数を誇る当誌は、私達が興味を持つネタを追っていることです。つまり販売につながる話題を選び、優秀な記者魂溢れるスタッフが、深夜早朝の区別無く現場で徹底的に取材してウラを取っています。かつて司馬遼太郎が人物にスポットをあて、歴史をドラマ風小説にして人気を博したように、当誌も人物をターゲットにしています。スクープによってその人の地位や名声を失うかもしれない展開を狙い、他メディアの波及や捜査などの公権力をも想定して、いくつかの局面毎に販売につなげていると思います。
もうひとつとして、女性読者を取り込んでいます。かつての中年男向けの雑誌から転換しており、「阿川佐和子のこの人に会いたい」や林真理子・尾木直樹など、女性に人気のある筆者を選び連載し、定期読者を囲っています。決してグラビアにヌード写真は載せません。
格調高い文学賞の主催事業とスキャンダラスな話題の提供は、一見方向が違うように思われますが、どちらも販売(儲け)にしっかりと結ばれています。身近にネット等で、タダで情報を得ることができる昨今、「文春を買って読もうか」という気にさせるツボを心得ています。休刊や廃刊が続く雑誌業界の中で、お手本となる企業戦略を感じます。(や)